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「自分は情報の処理速度が速い方ではないし、情報が多くなるとどんどん自分が曇っていく感じがします。そこで、情報が一旦頭に溜まったら走りに行くようにしています。走っている時が自分と向き合える時間。その時間を使って、溜めた情報の中から、処理するもの、しないものを振り分けています。ずっと東京にいると思考停止してしまうので、一か月ごとに環境を変えて走りに向き合う時間を作っています」
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「自分の作品に対するステートメントやインタビュー原稿など、執筆している時は自分の内面と向き合える時間だと思っています。また、映画館という空間も自分には大切ですね。2時間という時間から得られる情報は、ソーシャルメディアからのものとは違う。長い時間をかけて深く一つのことを伝える、そんな空間の中に身を置くことは自分にとって大事なことです」
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情報が溢れ、それらがものすごい速さで消費されていく現代で、自分と向き合うために一人の時間を大切にすると話すのは、ランナーの大迫傑と、映像監督・写真家の奥山由之。まったく別のフィールドで活躍する同世代の二人が、それぞれのことをよく知る足立公平(MARCH INC)を介して出会い、対談が実現した。対談本編では、大迫と奥山がそれぞれの領域で、何を本質と捉え、どんなスタンスで取り組んでいるのかが語られた。
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これは余談だが、今回の対談で二人に振る舞われたのが、ケニア産のコーヒーだった。大迫はブラック、奥山はミルク多めのカフェオレスタイルで。力強い酸味が利いたケニアのコーヒーが、スタイルやアプローチがまったく違う二人の、「ぶれない本質」という部分と重なり合った気がした。対談動画は6月中旬にsketch-book.comにて公開。
文章:Chozaemon
写真:山内聡美