アスリートが挑戦する社会課題の解決

早稲田大学の同学年であり、アスリートとして世界で共に戦ってきたマラソンランナー大迫傑と元クロスカントリースキーヤー宮沢大志は廃棄されてしまう予定の長野県信濃町産のとうもろこしを使った加工食品の企画を進めていた。

2022年初旬、大迫は宮沢の住む信濃町に余暇を楽しむために訪れていたが、その中での何気ない二人の会話から本プロジェクトは持ち上がった。

「この前農家さんから聞いた話だけど、信濃町のとうもろこしはかなりの量が廃棄されているみたいなんだ」という宮沢の一言に、大迫は「それ、解決するようなアクションを一緒にやってみようよ」と声をかけた。

2022年6月にとうもろこし農家の小林さんの元を二人で訪れ、課題を直接ヒアリングした。その際に、廃棄される予定のとうもろこしをコーンスープとして加工し、自分達で直接流通させようという大まかなコンセプトも決まった。

※この日の様子は以下の記事に掲載しています

一から商品を作るということ

7月から始まるとうもろこしの収穫期。とうもろこしは収穫できるタイミングが不定期で、農家さんから宮沢には収穫日前日に声がかかる。農家さんが市場に出荷するための作物を収穫した後に、市場には出せないとうもろこしを宮沢自らの手で収穫させてもらった。

とうもろこしの収穫と平行して、商品企画を進める必要があった。どのように作ってどのような味にするのか?商品名やパッケージのデザイン、価格設定など、決めなければならないことが多くあった。アメリカでトレーニングを行う大迫はチャットやオンラインミーティングでこれらのコンセプトワークに参加してきた。

ものづくりの過程はアスリートにとって経験したことのない業務が多かったが、人任せにせず自分たちで試行錯誤しながら商品を作ってきた。

いかに美味しいコーンスープを作るか

大迫がニューヨークシティマラソンを走り終えて帰国したタイミングに、ちょうどコーンスープの最終試作が出来上がった。11月某日都内にて大迫・宮沢は久しぶりに再会し、試食会を行った。

Potacoという商品名やパッケージデザインも固まり、完成したコーンスープを試食する。「うん、美味しい」大迫がコーンスープを口にした第一声であった。コーンスープの味に試行錯誤していた宮沢も安堵の表情を浮かべる。大迫と宮沢は今回作るコーンスープは「僕たちが作っているものだから」「食品ロスを減らすためだから」という名目だけで買っていただける商品ではなく、前提としてクオリティ面でも選んでいただける商品(お客様に満足いただける美味しい商品)を作るべきだと考えていた。

宮沢は加工工場とコーンスープ作りの過程で原材料の配分や内容に改良を重ねて、試作を繰り返してきた。ブランドものの牛乳を使ったりもしてみたが、牛乳の味が立ちすぎてしまうとコーンスープ本来の風味が消されてしまうことも分かった。

今回ご提供いただいた小林さんの栽培するとうもろこしは糖度が17-18度にもなり、とても甘い。厳選された品種、キノコ栽培用のおがくずを使用した堆肥、そして信濃町の気候が相まってこの甘さが出せているという。宮沢は小林さんの作るとうもろこしの甘さをコーンスープとして引き出したいと考えていた。

出来上がったコーンスープは砂糖不使用ということが信じられないほど甘さが感じられる商品に仕上がった。これは大迫をはじめとして試食したメンバーが最も驚くところであった。信濃町で愛情かけて作られたとうもろこしの自然の甘みを皆さんにも是非とも味わって欲しい。

小さなアクションから輪を広げていく

一番最初の商品を世の中に送り出せるところまでこぎつけることができた。今はまだ小さなアクションではあるが、二人にとって大きなを一歩であった。
信濃町でアスリートと農家さんの接点ができた。廃棄する予定だった農作物が美味しいコーンスープに変わった。合成添加物を使用せず、素材本来の良さを出せる商品を作れた。これを見て同じようなアクションを起こそうと思うアスリートがいるかもしれない。ビジネスとして成立するようになれば、地域やアスリートに経済的にも還元できる仕組みを作れるかもしれない。

12月9日(金) 11:00からPotacoを販売予定

12月9日(金)11:00からSKETCH BOOKのオンラインストアにてPotacoの販売開始することが決まった。

今回は収穫できたとうもろこしの量・生産リソースなどの都合から、そこまで多くの量を作ることができなかった。また、どのくらいコーンスープが売れるのかという需給予測も難しく、加工食品という賞味期限のある商品を作り過ぎてしまうとコーンスープ自体を廃棄しなければならなくなってしまうというジレンマも孕んでいた。万が一「買えなかった」というお客様を作ってしまっては申し訳ないという思いもありながら、解決しようとしていた課題を更に深刻化させてしまうことだけは避けたいとも考えていた。

「皆様に信濃町で育ったとうもろこしを使ったコーンスープを楽しんでいただきたい。また、このような課題や地域のことも知っていただくきっかけにもなれば嬉しい。」と二人は語る。

是非、信濃町産とうもろこしを使った生まれたばかりのPotacoをお試しいただきたい。