Suchmosの鍵盤奏者・TAIHEI (Pf,Rhodes,Synth)が中心となり、佐瀬悠輔 (Tp) 岩見継吾 (Wb) 松浦千昇 (Dr)たちと結成された賽 (SAI)というジャズバンドがとにかく最高なので音楽が好きな貴方に聞いて欲しい。
2024年秋、賽は東京と京都の2箇所でLIVEを開催。
ステージに上がるとまるでオーケストラが楽器のチューニングをしているかのような演奏が緩やかに聞こえ始める。しばらくすると松浦の鋭すぎるドラムが物凄い速さで飛び込んできて一瞬で景色が変わる。抜群の安定感とグルーヴを生み出す岩見のベースラインと一点の曇りもない佐瀬のトランペットで心が奪われる。そして全ての楽曲の作曲者であるTAIHEIのピアノのタッチや旋律はどこまでも美しく恍惚である。
バンド内の奏者が素敵なImprovisationをすると目を合わせて楽しそうに大笑い。技術を要するポイントになると冷静かつ着実に良い演奏にフォーカスする。それぞれの技術と感性を行き来させながら、賽でしか鳴らせない音楽を繰り広げる。まさにプロフェッショナル。それぞれの奏者が規律を持って楽しそうにプレイする約90分のステージは、いつか覚えていたはずの自由を思い出させてくれるようなマジカルな時間だった。
この日参加した3人のゲストシンガーたちも素敵だった。
1人目は京都出身のラッパーDaichi Yamamoto。安定感のあるオケと共にフリースタイルのラップが冴え渡った。力強くソウルフル。2人目はウッドベースラッパーで知られるNAGAN SERVER。気負わないニュートラルでスムーズなラップでお客さんたちを華麗に溶かした。そして3人目はYONCE (Suchmos・ Hedigan’s)。圧倒的な存在感としなやかに伸びていく歌声は奏者とお客さんをひとつにした。
京都のライブでは、最後の曲を終えてもお客さんは帰る気配もなくアンコールのアンコールを期待した。その様子をみたTAIHEIは、バンドメンバーが楽屋に戻ってしまったこともあり、ひとりでステージに戻りソロピアノを即興で4分演奏した。とてつもなく優しくて心に残る演奏。さっきまで楽しそうに笑っていたお客さんたちから啜り泣く声が聞こえた。TAIHEIのピアノ、ピュアで真っ直ぐで美しくて、何をどうしたって心が揺れてしまうのです。
さて、そんな賽(SAI)のライブが2024年12月27日(金) 渋谷 CIRCUS TOKYO で開催されます。2回言います。賽(SAI)というジャズバンドをまだ見たことがないのなら、最高なので是非LIVEで聞いて欲しい。
文章・写真:足立公平