7月の大迫はアリゾナ州フラッグスタッフでトレーニングに集中していた。午前のルーティンを終え、少しリラックスした後、車で10分ほど出かけた。しばらくして一緒に帰ってきたのは競泳の瀬戸大也だった。瀬戸がフラッグスタッフで合宿をしているという噂を聞き、大迫の家で会うことになったようだ。

瀬戸は言う「今日、大迫さんにたくさん聞きたいことあって、本当に楽しみで来ました!」2人はダイニングにある席にちょうどいい距離感で座った。瀬戸が間髪入れずに切り出す。「長野県湯の丸とフラッグスタッフ、走ってて感覚的にどうですか?」「標高が100m違うと変化を感じますか?」「どういう1年間のスケジュールなんですか?」「日本は湿気があって、こっちはカラカラしてるじゃないですか。どっちで練習する方が強くなれるとかあるんですか?」「トレーナーさんがいなくて、コーチも遠隔じゃないですか。怪我の心配はないんですか?」瀬戸から大迫への質問がやまない。

普段の大迫はトレーニング内容に関しては非公開としていて多くを語ることはほとんどない。けれども瀬戸からの質問はひとつ一つ丁寧に回答した。大迫から瀬戸への質問もあり、話の内容はアスリート同士にしか分からないようなディティールへと展開した。

とにかく楽しそうだった。二人の会話を間近で見ていて思ったこと。瀬戸は強くなることに一生懸命で、大迫と話しているこの瞬間ですら成長をするんだという気合いのようなものを感じた。大迫はいつものように冷静沈着で、自分なりの視点を持って瀬戸からの刺激を楽しんでいるよう見えた。大迫と瀬戸のフラッグスタッフでの貴重な会話。もうすぐショートフィルムを公開します。もしあなたが走る人でも、走らない人でも。もし君が泳ぐ人でも泳がない人でも。このフィルムを見ると、今より少し強くなれるような気がすると思います。

文章:足立公平
写真:松本昇大