EATBEAT !とは?

EATBEAT!とは。料理人開拓人の堀田裕介氏と音楽家ヘンリーワーク(僕ですね)が2人でやっているユニット名のような、イベント名のようなものです。その名の通り食べるっていう言葉と、ビートっていう言葉を掛け合わせた内容です。食べる音とか、食材を調理する音、もしくは収穫する音などをどんどんサンプリング(録音)していきながら、料理が作られていく時間の中で音楽も同時並行的に作っていきます。料理を食べながら音楽を味わう。それがEATBEAT!の趣旨であり、それ以上のことはありませんっていう感じですねw。もう通算で大小合わせておそらく40,50回はやってると思います。

どんな始まりだったのでしょうか?

きっかけは僕がイベントでライブをしてるところを、堀田さんが見に来てくれたのがスタートです。ライブ後すぐに堀田さんが声を掛けに来てくれて「今度イベントあるので一緒にやれないですか?」という感じでした。

その当時僕がやってたライブっていうのは、鳴らなくなったおもちゃや壊れた楽器をたくさん集めて、テーブルの上に置いて、それをトンテンカンテン叩きながらどんどん音楽としてビートを構築していくというようなものでした。制作過程を音楽として楽しんでもらうようなちょっと変なことをやってたんです。それを見て堀田さんが「これって料理でもやれないですか?」みたいなことを思って声をかけてくれて。堀田さんの中にはもうすでに構想があったらしく、それを試しでやってみよう!みたいなのが第1回EATBEAT !でした。

第1回目は僕がまだ大阪にいた頃で、EATBEAT!っていう名前も存在していませんでした。最初は堀田さんが料理のケータリングをしている現場だったんです。そのイベントは「音叉」っていうテーマのアートイベント。(音叉:楽器をチューニングする時に使う道具)音をテーマにしたようなイベントをされていました。

料理も五感を大事にするっていうところで、箸さえ使わずに手掴みするためにのゴム手袋を渡して食べるっていうような内容はすでに決まってました。料理の方向性もある程度決まってたんですけど、それに掛け算で音要素を足していく狙いで僕がスカウトされたんです。その場で調理音を拾いながらライブしていくっていうそんなスタートでした。

EATBEAT ! 名前の由来は何ですか?

このタイトル、僕が考えたんですけど、やってることが面白いし、しかも他ではない。あともう一つ言うならば、説明しづらいっていう印象があって。何かいい名前ないかな~ってずっと考えてたら、ふと「イート、ビート。あっ、なんか似てる!」単純にそんな感じでしたw。

ヘンリーワークのプロジェクトはコンセプト作りが素敵ですよね。

いつどこでそのスキルを手に入れましたか?

別にどこかで学んだってことはないんです。でも自分はずっと美術教育を高校生の時から受けてきて、事あるごとに品評と言うかReviewを受けてきました。その中で、何回もけちょんけちょんにされるわけです。言われる理由のほとんどが、コンセプトに関してでした。あまり技法のことって言われることは少なく、仮に言われたとしてもそれほど悔しくない。でもコンセプトに対するネガティブなフィードバックとなると、それはもう根本からポキっ!って感じじゃないですか。コンセプトが理解してもらえない時の悔しさもあるし、言われて図星だった時の悔しさもあったりします。そういう経験の積み重ねから、何事も物事に向かう時はコンセプトが大切と言うことがわかりました。自分の中で反芻するようにしてきたっていうのも大きいのかなと思います。何のためにやってるのかっていうポイントを追求すると見えてくるものがあります。

最新EATBEAT !について思うことは?

桐生のPurveyorsっていうところで開催しました。それは過去のEATBEAT!の中ではかなり低予算なものでした。経費はもちろんサポートしてもらう形でしたが、手持ち弁当みたいな状態でした。それ故にやりたいからやるっていうスタンスで。すごく純粋な動機ではじまったEATBEAT!でしたね。

いつもアウトプットを続けていると、EATBEAT!のためのインプットが足りなくなってくるんです。じゃあ僕と堀田さんがどう考えてるかっていうと、2人ともビジネスとしてはやっていないので、儲けは全く気にしていないんです。やりたくないことはやりたくないじゃないですか?だからなんとか面白くしていかないと自分たちが自分達のアクションや表現に飽きてしまって、次に続かないっていう危機感があるんです。とにかく面白く楽しめるようにしようっていうのを心がけているんです。そういう視点から前回は、Purveyorsのスタッフ兼ギタリストで、ISHIKAさんというアーティストに参加して頂きました。あとは僕たちが大好きなうどん屋さん清水屋さんっていう方がいて。うどん屋さんもすでに「udonbiento」という名のアンビエントギターをバックにうどんを打つというイベントをやってたりとかされていて結構音楽フレンドリーなんです。感度もすごく高い方でしたので、一緒にできたらっていうところを考えました。僕らがやってる方法の1つとしては、ゲストをどんどん取り入れるっていう。食材、音、人をローカルからハンティングしていかないと飽きちゃってきます。そうしないともはや入り込めないんですよ。そういう風に取り入れながら進んでいくと、どんどん中に入っていけるような感じがするし、お客さんとも繋がりを感じれます。そうすれば必然的に毎回違う内容になるし、スペシャルな会にもなります。

こうした開拓やチャレンジをしていかないと、自分たち2人のアイディアだけだと、すぐ行き詰まってしまう。毎回、前回と一緒やんっていう。しかもお金がかけられなければ、それがグレードダウンするって可能性だってある。でもそれだけは避けたい。堀田さんとはアイディアの出しの回数もたくさんこなしてきているので、現実的なところと、非現実的なところのライン、それらを上手くなじませてく作業をしています。非現実をより現実的に持ってくるカタチはすごく上手かもしれないですね。

EATBEAT !の大事なところは?

一番大事なところって、最終的に「おいしい」なんです。そしてそれは大体のケースもうそれは確約されていると思います(実際に美味しいので)。イベント行った時に参加者の期待値というのは存在していて、そこへの満足度ってあるじゃないですか。期待値の多分80%ぐらいまでは「おいしい」でもっていけるんです。お腹いっぱいにもなりますから。あとの20%をどう頑張ってパフォーマンスできるかっていうチャレンジがあります。ミュージシャンのような状態に似ているかもです。ファンの方々が会場の80%来てくれてるような状態で、最初から受け入れられているような感じがあり、ゆえに良い雰囲気の中で進行できるような感覚があります。

プレッシャーがかかるEATBEAT!の今後は?

次の会がもう決まってるんですけど、食レポラップバトルっていうのを仕込んでてw。友達にラッパーがいるんで、食レポのラップバトルをするという。うまいものを食って、上手いことを言うっていう、っていうキャッチフレーズでw

僕ら収支を気にしなくていいって言うところが、かなり強いと思います。基本的に自分たちの生活、自分たちの仕事、それぞれの生業で成り立っているので、EATBEAT!を営利目的にしていないんです。そこはすごく健全で企画を面白く持続することに繋がっていると思います。もうやりたいことっていうことにフォーカスしながら、興味があることっていうことへも純粋にのめりこめる。

そうすると人の意見を聞く余裕もすごい出てくるんです。自分たちを押し通しすぎると面白くないっていうことに気づきました。自分たちの想像を超えることはできないっていうのがわかってるんでしょうね。だから人の意見はめちゃくちゃ聞くようにしたりとか、そのバランスがすごくちょうどいいんだと思いますし、そういうバランス、良いものを作り上げるには必要不可欠なのかもしれませんね。

次回のEATBEAT!また楽しみにしていてください。

Comments: henrywork

PROFILE

音楽家:ヘンリーワーク
EATBEAT!という不思議なイベントの企画者・主催者・演者・司会者を務める。
そしてchalkboyというもう一つの顔を持ち、ハンドライティングワールドの可能性を追求している唯一無二のアーティスト。活動内容や方向性は自身で考え抜いた企画に呼応するように自由自在。ユーモアと柔軟性に溢れていて、一緒に仕事する人たち、参加する人たちを楽しませる不思議な魅力を搭載している。極めて稀有な存在。